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ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎


平野啓一郎の『決壊』が、私の今年マイベストに変わりはないのですが、この『ゴールデンスランバー』も実に捨てがたい。これも相当面白い。
読み終わった後の、えもしれぬ幸福感はなんでしょう。(『決壊』はそうではなかったからね)
実に素敵なエンターテイメント作品である。

仙台で起きた首相暗殺。それはパレードのまっただ中、白昼堂々起きた。
爆発によって、首相は死亡。そして、2日後には市内に住む青柳という30代前半の男が犯人として指名手配される。

ベースはJFK暗殺である。
犯人とされているオズワルドは、逮捕後すぐに暗殺されて事実は永久に分からずじまいだったあの事件。実は国家レベルの大きな陰謀に、オズワルドははめられたという説もあり、この『ゴールデン・スランバー』はその説をベースとした上で、無実の罪で逃げまとう青柳や彼のことを信じた学生時代の仲間などが繰り広げる約2日間に渡る逃亡劇を描いている。

小説のタイトルには、「A MEMORY」の文字が添えられている。

配送業者で働いていた青柳。顔はまあイケメンの部類だけど、学生時代からの彼女には、「私たちが付き合い続けても、『よくできました』止まり。決して『大変よく出来ました』にはならないね」という捨て台詞を吐かれて去られた経験がある。
突出した何かを持っているわけでもなく、大きな気概に満ちているわけでもない。
平凡そのものの男なのである。

彼が首相の暗殺犯だと報じられ、その元彼女はもちろん戸惑う。既に別の男性と結婚して子持ちであり、別れて一度も再会していない。
青柳君はそんな事件を起こすような人間に変わったのだろうか?
そう思いながらも、報道される青柳は、自分の知っている彼とは180度違う。

この物語で一番感動したのは、そうして彼と関わってきた友人や家族が、マスメディアの情報に決して流されず、自分の印象や記憶を信じて、彼を助けるという行動を取るところ。
現在は恋人も職も失くしていた青柳が、絶体絶命の状況から、彼の辿ってきた今までの人生で得た人々によって助けられる姿は、素晴らしすぎです。

「いいか、これがおまえたちの仕事だということは認める。仕事というのはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ。バスの運転手も、ビルの設計士も、料理人もな、みんな最善の注意を払ってやってんだよ。なぜなら、他人の人生を背負ってるからだ。覚悟を持てよ」

青柳の父が、正義人の顔をして追い詰める報道陣に向けて言うこの言葉。
それと、ラストシーンが強く心に残りました。
登場人物はみんな色んな意味でカッコ良いけど、この父、そして元彼女が、すごく人間として好きでした。自分もこうありたい。

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